一握の真砂

ジャズりんご

就職活動をやめたときのこと

大学4年の春になると周りもそれぞれの進路に対して目に見えて真面目に取り組むようになった

私は特に院進する気合いもなく就職活動に参加する体力も持たず3年終わりの春休みのテンションのまま過ごしていた

就活は3月の時点で諦めたのだが、きっかけはカレーだった

 

説明会が神保町で1件あったので、ついでにカレーを食べて帰ろうと思っていた

神保町はカレー屋と古本屋がたくさんあるが、さいきんはチェーンも増えてきたとかなんとか


で、ボンディというカレー屋に行った(テレビにも出るような有名な店らしく、たびたび名前を聞いた)

いちばん人気らしいビーフカレーが1480円

東京さおっかねえところだと思いつつ注文し(こっちでは飲み物・サラダ・スープ付きのランチが900円で食べられる)、あとジンジャーエールウィルキンソンのだったのでうれしくなって頼んだ(好物)

先にジンジャーエールとバター付きのジャガイモが配膳される

すこし時間をかけて運ばれてきたカレーはあの、なんていうかアラジンと魔法のランプみたいな、あのアレ、ああいう容器(伝われ)に入っていて、ごはんにはチーズがかかっていた

(魔法のランプからひとくちずつ掬って食べたのだが、2回目行った際にまわりを見渡したらみんなごはんの皿にルーをあけていたので、たぶんそっちのほうが食べやすいんだと思う)

 

とりあえずひとくち食べてみて、カレーの味がわからなかった

かろうじて目立つ牛肉のことを「牛肉だ」と認識はできるものの、それ以上の情報が受け取れない

おなかがすいているはずなのに口に入っていかないし、なんだこれと思った

疲れてたんだろうなあということを認識した

部屋に帰って、もうやめようと思った

就活が終わった

 

勤め人になるイメージがそもそも湧かなかったし特にやりたいこともないのに将来の食い扶持を稼ぐためだけに行動するというのが結構ストレスだったんだと思う

えっ自殺したほうがはやくね? コスパ最強じゃね? という


ここからは余談になる

人の手伝いで就活講座に行く用事があったりしたのだが、とにかく人の不安は金になるなという印象が強い

というのも、「履歴書に貼る写真は写りがいいほうが印象がいい、写真屋の撮影で証明写真を撮るべきだ」という宣伝がその講座でたびたび挿入されたから

それは「そのためにあなたの写真を撮ってあげる」という体で「いい写真じゃないと落ちる」という脅しをかけているようなものだし、学生の不安を煽って自社で写真を撮らせるとか生きてて恥ずかしくないのかなと思った

写真で採用/不採用を決定するの、ふつうに差別では……?


これまでもこれからも、社会に疎外されながら生きていくのだと思います